ー最近は、どういった活動をされているんですか？

　「インターネットの、という意味でしたら、もうほとんど活動らしい活動はしていないかもしれません。気が向いたときに動画を投稿して、あ、たまに、趣味のゲーム配信を少し…それくらいです。最近はフロムソフトウェアの、エルデンリングというゲームにハマっています。ご存じですか？そう、それです。めっちゃ難しいやつです。もともとフロムのシリーズはかなりやりこんでいて、ファンなんです。初見殺しの要素も多くて、倒すのが難しいボスもたくさんいるんですけど…何度も挑んで、攻撃パターンをよんで、自分が敵の動きに適応していくのがわかるんです。地道に何度も同じことを繰り返して、ようやく達成できる、みたいな。自分の人生のクエストも、ゲームみたいに淡々とクリアできたらいいのに、とか思ったりしますけどね。あっ、話が逸れちゃって、すみません。つい楽しくなっちゃって。私、数年前に、エッセイ本を出版したんですよ。ありがたいことに、しばらく生活に困らないくらいの印税を頂いて、二年ほど休職してたんです。北海道、沖縄、山梨、伊豆、大阪、島根、宮崎、福岡、いろんなところに旅行に行きましたね。それから、恋愛したり…あと、もういやってなるくらいに、寝ました。はい、睡眠です。信じられないくらい、毎日寝てましたね。それで、そういう生活にめっきり満足しちゃって、最近復職しました。もうすぐ今の仕事を始めて一年になります」

　ーでは、Youtubeでの活動は…

　「やめる、とかはないです。よく自分の活動を、引退します！って宣言する人っていますけど、あれってダサいなって思ってて。始めるのも、やめるのも、他人のリアクションを介さずに、自分ひとりでやればいいのにって。自分の場合、突然バズったんですよ。本当に突然。数十回しか再生されてなかったような動画が、一日で何万回も再生されて。何千件もコメントがついて。正直、めちゃくちゃ怖かったですね。当時はがっつり会社に所属して営業の仕事をしていたんですけど、身バレって意味でもそうですし、一番は、こんなどこにでもいる普通の社会人である自分が、バズったことで、もしかして、自分ってすごいんじゃ？って勘違いしちゃいそうで。そこから数年は、ずっとそういう自分との戦いだったと思います。Youtubeは見るのも大好きだし、自分の知らないような世界をお手軽に知ることができる最高のツールだと思いますが、自分の思考だったり趣味や生活だったりを、不特定多数の人間に良しか悪しかジャッジされる可能性がある、って考えると、普通にヤバイですよね。怖い」

　ーそれでも、ずっとYoutubeを続けていらっしゃる理由は何ですか？

　「面白いから、だとちょっと漠然としすぎてますね。ううん、何だろう、大げさに言うと、自分の生きた証だからじゃないですかね。これから先、あと何年生きるかわからないですけど。いずれ死んじゃう私たちが、きっと忘れちゃう日常の一ページみたいなものを、感じたことを、見たことを、作ったものを、何かしらの形で残しておくことができたら、もしかしたら誰かの記憶の中に留まることができるかも、みたいな。さっき、始めるのも、やめるのも、他人のリアクションを介さずに、全部自分ひとりでやればいいのにって言いましたけど、めっちゃ矛盾しちゃってますね。いや、でも結局、人は人を求めるんですよね。それが弱さで、同時に、ひとりでいることの弱さを認められる強さでもあるのかな。なんか、キモい話してすみません」

　ーいえ、興味深いです。今回、私たちの依頼しました　妄想が現実と理想をつなぐプロセスである、というテーマについては、どうお考えでしょうか？

　「本題ですね。私、自身のYoutubeだったり、著書だったりでよく　愛とは想像力だ　という話をしてるんですよ。実際そう思っていて。例えば、今私が住んでいるマンションの隣の部屋には、長く続いた雨がやんで空が白んできた時間に、最愛の娘におはようのキスを贈って会社に向かう若いパパがいるとか、そんなパパを、眠たい目をこすりながら玄関で見送るママがいるとか、凍てつく寒さの夜に、大きな橋の下で凍えるホームレスの男性に、自分が首に巻いていたバーバリーのマフラーをかけて去る老婆がいるとか、世界中で飛び交う愛してるよって言葉の数だとか、街を照らしたまま消えない灯りの意味だとか、冷蔵庫にふたつあるプリンだとか、あの人が好きだと言ったから目に付く道端のパンジーだとか、定期的に実家から送られてくる米とカップ麺だとか、全部。この世界にある全て、起きること全て、想像の中に、愛って生まれるよなあって思うんです。でも、妄想って、ちょっと違うじゃないですか。言葉の中に、ネガティブな要素がある。文字にしても、妄り（みだり）な想像、って書いて、妄想。なんか、ちょっとだめなこと、エロティックなこと、そんな響きがあるじゃないですか。