性別に縛られず誰もが自由にファッションを楽しめる世界を作りたい
10代の頃は男の子になりたかった。
スカートや花柄の可愛い服やリボンが苦手で、いつもボーイッシュなジーンズにTシャツ姿でヘアスタイルもショートカット。歩き方はガニ股、男の子と同じように言葉使いも荒っぽかった。周りのみんなはそんな私を当たり前のように受け入れてくれていた。
そんな私は今、メンズ体型でも可愛く着られるジェンダーフリーなお洋服ブランド、“ブローレンヂ“を運営している。昔からある男女どっちが着ても違和感がないようなシンプルな無地のTシャツなどではなく、従来レディースブランドにしかなかったような花柄やレースなどの素材を使って男性の体型に合わせたワンピースなどを製造販売している。
立体裁断という手法で男性の骨格通りに設計しデザインに認知心理学の目の錯覚を応用して屈強な骨格が目立たないような工夫をしている。例えば、ネックラインを縦に長くデザインすることで広い肩幅を目立たせなくしたり、身頃と袖の切り替え線を通常よりも内側に入れて細い腰をふんわり見せて柔らかい雰囲気を出したりと細部までこだわったお洋服作りをしている。
この本のタイトルには“妄想”という言葉が使われているが、辞書を引くと「根拠のないあり得ない内容であるにも関わらず確信をもち、事実や論理によって訂正することができない信念」とある。また、ネットで“妄想“と検索すると薬物依存症や統合失調症の症状などが上位に表示される。私がここで書く“妄想”は「あり得ないものでもないし、病的なものではなく、宝くじが当たったら何をしようかな?というようなものをちょっとだけ煮詰めたものを「妄想」と定義する。
私は昔から妄想が好きだ。好きというか癖のようなものかもしれない。学生時代も興味のない授業を受けているといつの間にかぼーっと妄想の世界に入っていた。今でも人の話を聞いている時に気づいたら自分の世界に入り込んでいたりする。失礼は承知だが気をつけていても勝手に妄想が始まるからどうしようもない。
妄想の内容はその時々で全然違うが大抵はしょうもないことばっかりなので覚えていない。でもたまに心が躍るような妄想をすることがあってその時はずーっとその妄想から抜け出せずにいる。
私は25歳の頃に社会人入試で大学生になった。
そのきっかけも妄想だった。専業主婦で何の刺激もない生活をしていた時、テレビでドラゴン桜という落ちこぼれ高校生が東大を目指すドラマの再放送が流れた。観ていたらなんだか自分も勉強したくなってきて、もしかしたら私も東大に行けるんじゃないか?と妄想を始めた。私は高卒でしかもギリギリの成績で卒業するほどお勉強が嫌いだったが、大人になってから大学生になるなんてなんだか面白そうで次の日から受験勉強を始めた。目標は東大!といきたいところだったが、地理的にも通える範囲で大阪の大学をいくつか受験することにした。受験科目は英語と小論文と面接。毎日ニュースを読んでは論文を書き、英語は中学英語からやり直し、ラジオ講座などを聴いたりしてThis is a pen.からやり直した。そして猛勉強の末その翌年に関西大学に入学した。ドラゴン桜をきっかけに妄想を膨らまし本当に大学生になってしまった。
大学で、文学部の心理学専修というところに入り様々な心理学について学んだ。臨床心理学、発達心理学、神経心理学、色んな分野がある中で私は認知心理学の錯視に興味を持った。同じ形のはずなのに色が違うと大きく見えたり小さく見えたりする図形を誰でも一度は見たことがあるだろう。私はその不思議な現象の虜になった。大学卒業後は大学院に行く予定だったが挫折したので、せっかく学んだ錯視を生かして何かできないか考えた。ファッションが大好きで手先が器用だったので服を作ってみようと思い立ち、すぐにミシンを買って服を作りを始めた。初めは自分のコンプレックスだった脚の短さをカバーするために、前が短く後が長いライダースジャケットを作った。着てみると全然足が短く見えない。上出来だった。いつくか作品を作っていくうちに調子に乗った私はせっかくなら自分のオリジナルブランドを作りたいと妄想を始めた。自分にしかできないことは何だろう。錯視を使って体型をカバーするだけではインパクトが足りない気がする。
そこで、自分の幼少期を思い出した。女の子だけど男の子の服が好きで、だけど、成長とともに体型が変わってそれまで気に入ってきていた服が似合わなくなった悔しさが蘇った。女性がボーイッシュな格好をするのはもう今は当たり前だけど、逆はどうだろう。街中でたまに悪目立ちしている女装家を見る。調べてみると、トランスジェンダーや女装家の人たちは大きめサイズのレディース服などを探して買ってはみるが、肩幅が窮屈だったり丈が足りなかったりと服探しに困っていることを知った。どうや
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