まず、皆さんの職場に採用活動に自動化ツールを導入するとなぜよいと思うのか? その理由をご紹介するところから始めます。
「自動化ツールを導入しても時間が少し短縮できるだけ。新しいことを覚えるのに逆に時間がかかってメリットがあまりないのでは」と思っていらっしゃらないでしょうか? 時間短縮はもちろんですが、それ以外にも自動化ツールを導入することで得られることは多いです。
1.人手不足への対応ができる
ご存じの通り労働力不足は皆さんの会社だけでなく日本全体の深刻な課題となっています。特に人事や総務といったバックオフィス業務は「社内の何でも屋さん」とばかりに多岐にわたる業務で活躍されています。
わたくしのご支援先でも「社員総会の準備で学生にスカウトをうつ余力がない」「合同説明会が来週あるのに、社内報を作成しないといけなくプレゼンテーション資料の刷新が間に合わない」など、社長は「採用が第一命題!」と言っているにもかかわらず、採用担当がそれ以外の業務に手が取られている職場も多く存在しています。
「あと一人仲間がいてくれたら何とかなるのに」という思いを抱えている人も多く、社長に直談判した会社が何社あるか覚えてもいないほどです。とはいえそもそも社内に人がいないので、新人配属もそう簡単ではない。どちらかの業務を諦めるかというと諦められない。
そんな時に、自動化ツールを導入し一部業務を任せることができれば時間が作れ、「どちらかの業務を諦める」ということもなくなります。
自動化ツールは従業員データの管理、給与計算、労務手続きなどの定型業務を効率化し、従来なら人手に頼らざるを得なかった作業を減少させます。これにより、人事や総務のスタッフは、より「人にしかできない業務」に集中できるようになります。
経済産業省による報告書でも、労働力不足が今後さらに深刻化する中、自動化ツールの導入は業務効率の改善と企業の競争力強化に不可欠であるとされています。
2.業務プロセスの精度向上と法令遵守の強化
自動化ツールは時間削減だけがメリットではありません。人的作業にありがちなちょっとした間違いやミスを最小限に正確に業務をこなしてくれるという特色もあります。人事や総務のスタッフが扱う情報は個人情報も多く非常にナーバス。法律にかかわる「間違えてはいけない作業」も存在します。日本はこういった規定に厳格であり、特に企業が法令を遵守するためには、正確な業務プロセスの遂行が求められます。自動化ツールの導入は、これらの業務を機械が自動で行うことで法令遵守を確実に行うために重要です。
例えば、給与計算や労働時間管理、書類の作成やリーガルチェックなどにおいて、ミスを減らし、法的要件に基づく正確な処理を行うことに自動化ツールは効力を発揮します。また、更新される規則や法令に対応するための機能が搭載されていることが多く、企業が常に最新の規律規範への準拠が実現できます。
HR総研の調査によれば、31%の企業が数値化による意思決定の精度向上が自動化ツールの導入で達成できたと回答しております。
2020年【HR総研】働き方改革(HRテクノロジー)に関するアンケートより引用
HRテクノロジーの導入で達成できた目的
3.ペーパーレス化と業務効率の向上
人事や総務の業務は常に大量の書類や文書に囲まれています。会議のたびのコピーや議事録の管理、査定会議のたびに過去の人事情報をひも解くなど、大量のコピーや文書管理が必要となることが多いです。自動化ツールを導入することによりパソコンやスマートフォンの中だけで情報をやり取りすることが可能になり、ペーパーレス化を進め、業務効率を大幅に向上させることが可能です。特にベテランが多い職場は紙文化がまだ残っていますが、これをデジタル化への移行することが可能になります。
総務省の報告によると愛媛県西予市でペーパーレス化を進めることで、全職員の7割が業務効率が上がったと回答しています。また、デジタル文書管理によるコピーコストが半減、FAXの利用が1/10に削減されたと報告されています。電子帳簿保存法も施行され、国を挙げてペーパーレス化が叫ばれている中、まずはこの領域から移行を進められるというのもよいと考えます。
総務省 ICTを活用したペーパーレス化から働き方改革への取り組みより引用
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/jirei/2017_091.html
4.従業員満足度の向上
自動化ツールの導入は、従業員に対するサービスの質を向上させることにも寄与します。例えば、勤怠管理や給与明細の確認、福利厚生の利用申請などをオンラインで簡単に行えるようにすることで、従業員の満足度が向上します。特にZ世代においては、学校の宿題提出もタブレット端末で完結するなど、学生時代から自動化された環境が当たり前になっています。会社に入って環境が劣化したと感じれば、彼らに満足度高く働いてもらうこともむつかしくなるでしょう。
また、自動化ツールは、従業員が自分の情報を簡単に管理できるセルフサービス機能を提供します。これにより、従業員がHRに関する手続きにストレスを感じることが少なくなり、業務に集中できる環境が整います。
PwC社の調査によると、自動化ツール(HRテクノロジー)の導入は従業員満足度(従業員エクスペリエンス)に効果的だったという回答が82%報告されています。
出所:「2020HRテクノロジーサーベイ報告書」PwC
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2020/assets/pdf/hr-technology-survey2020.pdf
p.8より
5.データ分析による戦略的な人事管理の実現
自動化ツールは人事や総務業務をデジタル化するだけでなく、データを活用した戦略的な人事管理を実現するためのツールとしても機能します。これにより、従業員のパフォーマンス管理やキャリア開発がより効果的に行えるようになります。
ベテランの田中さんが急遽退職を3年後に控え、この業務をだれに引き継いでもらうか悩む。自動化ツールは、従業員データの蓄積と分析を容易にし、企業がデータに基づいた意思決定を行うことを支援します。例えば、ベテラン営業の田中さんが家族事情で退職。気難しい大手取引客を任せられる後任が社内にいるのか? と頭を抱えたときも、従業員データを蓄積する自動化ツールがあれば過去の営業成績や適性検査の結果から最適な人材を探すことが可能になります。離職率の分析や原因究明、従業員の適性に基づく配置転換など、戦略的な人材管理も可能になります。
マッキンゼー社のレポートによれば、データ分析を含むデジタル革命が従業員のパフォーマンスを2.5倍向上させると伝えており、顧客満足の向上や顧客の離反阻止、ひいては売り上げの向上にもつながると結論付けています。
マッキンゼー緊急提言 デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージhttps://www.mckinsey.com/jp/~/media/McKinsey/Locations/Asia/Japan/Our%20Work/Digital/Accelerating_digital_transformation_under_covid19-an_urgent_message_to_leaders_in_Japan-jp.pdf
日本の人事や総務の業務に自動化ツールを導入することは、人手不足への対応、業務プロセスの精度向上、ペーパーレス化、従業員満足度の向上、そして戦略的な人事管理の実現という多くの利点をもたらします。これらの利点は、企業が激しい競争の中で効率的かつ効果的に業務を遂行するために不可欠であり、日本特有の課題にも対応するために重要です。各種の調査結果も示す通り、自動化ツールの導入はメリットも多く、なのでわたくしも皆さんにお勧めをしているわけです。
実はわたくしもこの書籍を執筆するのに自動化ツールを活用しています。この文章の7割は音声を自動で文字おこし文字化する「議事録自動作成ツール」を使っています。キーボードを打つよりしゃべるほうが得意なので、思いついた文章をマイクに向かってしゃべって、議事録ツールに文字おこしをしてもらい、Wordにコピーしてパソコンで修正して正しい文章にしています。データや資料もChatGPTやGoogle Geminiなどの生成AIくんたちに活躍して調べてもらっています。
自分でググって調べたら1時間かかる調査資料も、ほんの2分もあれば探し出してくれており、もはや手放せないツールです。「て・に・お・は」がおかしいところはWordが自動で修正を教えてくれます。自動化ツールによって限られた時間で書籍を作ることができているわけです。
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