失敗しないATS(応募受け付け自動化ツール)の選び方
採用活動の自動化に当たって、最も大切なツールはATS:採用管理システムです。リクルートやパーソルといった求人業界の大手が出しているツールから、聞き覚えの無いテクノロジー会社が出しているツールまで、その数76種類(2024年10月自力調べ)。単純に最低限の機能しかついていないものから、動画や写真をふんだんに使ったおしゃれな採用サイトとして使えるもの。1万店舗の応募対応ができる、さながら求人サイトのような機能がついているものまでさまざま。利用料金も無料で使えるものから、初期費用がうん百万円かかるうえに毎月のランニング費用もうん万円!と高額のものもあり、まさにピンキリです。
情報を入れ込むので、一度構築するとあとで作り変えるのが非常に面倒で、簡単に買い替えスイッチがしづらい代物でもあります。何をどう選べばいいのか、しくじらない採用自動化ツールATSの選び方をご紹介します。
採用管理システムの定義(基本4機能について)
ATSの機能は大きく以下の4つに分類されます。
・求人情報管理
求人票を作成し、管理し、求職者が情報収集するサイト(ジョブボードと言われる求人の掲示板)への求人情報の配信状況を管理する機能です。
求人募集活動をセルフサービスで行う『オウンドメディアリクルーティング』には無くてはならない機能で、情報発信の要である主要な求人検索サービス(アグリゲーションサイトと言います)、特に最大手Indeedとの連携があるかどうかは大きな選考ポイントになります。
応募受付の自動化「Indeedエントリー」と、優良求人配信の自動化「Indeed PLUS」の2つの連携ポイントがあり、どのATSが連携パートナーかはIndeedサービスサイトで紹介されています。(検索サイトで「Indeedエントリー対応ATS」と入力すれば検索結果に出てきます)。2024年10月現在でIndeedエントリーに連携しているツールが43種類、Indeed PLUSと連携しているツールが23種類あります。なかなか多いです。
このほかに、Indeedには連携されないものの、求人ボックス、スタンバイ、Googleしごと検索、career jet、キュウサクなどの主要検索エンジン(アグリゲーションサイト)には連携するサービスもあり、どこと連携しているかは各ATSのサービスサイトで調べておくとよいでしょう。全部と連携している必要はないですが、求人応募効果を効率よく獲得したいならば、求職者がよく閲覧している(サイト流入数が多い)無課金でも掲載してもらえる検索エンジンとは連携しておく必要はあります。
・応募受付管理
ATSで作成され、複数の求人検索サイトに配信された求人情報を見て応募してきた候補者の一元管理を行う機能です。求人検索サービス、アグリゲーションサービス、求人メディア、人材紹介、など、求人情報の告知にはたくさんの方法がありますが、その受付と面接設定のやり取りなどの連絡を一か所で、ツールによっては全自動で行える、非常に便利な機能です。
・選考進捗管理
応募者に面接日の連絡を行ったかどうか、面接済みの候補者に「合格」か「不合格」かの連絡をしたかどうか、合格者に内定の連絡を行ったかどうか、などを管理し、応募者対応の抜け漏れ防止を行う管理機能です。
複数回の面接を異なる人が行う中途採用、新卒採用には非常に重要になる機能です。複数の連絡システムを社内に入れたくない場合は、すでに稼働している自社内のワークフローとも連結可能なツールを選ぶとよいです。細かく分析したい人には、分析機能が充実しているツールもありますので、それを選択するとよいでしょう。
・内定管理
合否判定・内定から入社までのフォローを行う機能で、特に内定から入社までの間が長期間にわたることが多い新卒採用には不可欠な機能です。連絡を取る学生側にシステムを入れてもらうとなると負荷が上がるので、学生が連絡ツールとして使っているLINEと連動しているツールの利便性が高いです。ここも大きな選定ポイントになります。
採用ターゲットが変われば必要な機能も変わる
ATSは採用する職種や雇用形態ターゲットが変われば、選考フローが変わるため必要な機能も変わります。アルバイト採用、中途採用、新卒採用、アルバイト/中途採用でも年間数人の募集しかしない中小企業と多数の採用を行う大手企業とでは利用機能が異なります。単純に年間の利用料金や利用企業数が多いかどうかの理由で決めるのではなく、自社の採用ターゲットを考えてからツールを選ぶことも重要です。
自社にとっての『いいATS』を決めるために考えておくこと
ATSはすべてを網羅的に取り扱っている代理店が存在しないところがネックです。比較検討サイトも存在しますが記載は一部で、かつ選び方にも悩みがちです。自社にとって重要なポイントは何か?を抑えるために、自社にとっての『いいATS』を決めるためのポイントを考えておくことが大切です。ポイントは以下の4つです。
まずは必要な理由。お金を払ってATSを導入する必要があるか、あったらあったで便利だからとりあえず入れておく、など、必要性がどれくらいかをまずは考えましょう。ゴルフ仲間の会社が導入していい人材を採用したと聞いたから、自社も導入しなきゃいけないのか?と思う気持ちもあるかもしれませんが、年に1人か2人の募集で、ハローワークへの求人や張り紙と同じレベルで、気長に募集する場合や、単純に求人を作って配信して応募受付を行うだけなら、無料で提供されている基本機能のみを搭載したATSで充分です。
次に、やりたいことが何かを棚卸ししましょう。これによって必要な機能が浮き彫りになります。
「応募数が膨大で内勤スタッフが応募受付に手を取られて本来の仕事ができなくなることを解消したい」という場合は、自動受付、自動面接設定の仕組みが必要になります。「応募受付と面接担当者が別で、面接時の申し送りがメールだと忘れられることがある」場合は、申し送り機能がついていることが選択のポイントになります。
このシステムを入れてラクになりたい事は何か、解決したい課題は何か、ここを導入前にしっかりと考えてみることが重要です。
そして見落としてはいけないのは、このツールを使う人がこういったシステムが苦手でないかどうか?のITリテラシーです。基本はセルフサービスのツールですので、求人票の記載内容変更、企業紹介部分の情報追加や情報の最新化、など、システム改修以外の保守メンテナンスを自社内で行う必要があり、ATS管理担当を決めて対応する必要があります。
特に求人票に関しては、2022年10月の改正職安法で「求人企業がインターネット上で求職者に提供する求人情報の正確性と最新化の担保」が義務付けされています。Indeedなどの求人アグリゲーションサービスの求人表記規定も厳しくなり、昔みたいに張り紙感覚で気軽に求人情報を投稿することが、自社サイトといえど厳しく取り締まられるようになりました。ほとんどのサービスは最も正しく法令順守している「ハローワークの求人票」を基準にルール整備していますので、求人票の書き方はハローワークの指導をもらいながら進めてもよいでしょう。
一部ですが求人票メンテナンスが丸投げ対応可能なツールもあります。求人表現のメンテナンスだけでなく、定期的に求人露出を上げるために課金するといった自社運用が難しいなら、対応ツールを利用するか、あるいは採用代行会社(RPO会社とも言います)に依頼するのもよいでしょう。
自社で運用する場合は、担当する人にどのレベルであれば扱えるかを聞いて、デモサイトの取り寄せなどを行って実際に管理画面を触ってみて、取り扱えるかどうかを検討してツールえらびを行うとよいでしょう。ここは意外と重要なポイントです。
この4点を考えるだけでも自社にとっての「いい」ATSは絞れ、選び方をしくじるリスクが下がります。
しくじらない選び方は、ある意味、家電や車を選ぶのに似ているかもしれません。
トヨタ?いやMAZDAだよ!とメーカーで選ぶ人、カッコいいほうがいい!と維持管理費が高くてもそっちをとる人、安全性を最重要視する人、ディーラーメンテナンスを重視する人、買い物に使うだけだから小型に乗る人、家族が多いからとワンボックス車に乗る人、キャンプ用に4WDにする人、エンジン出力にこだわる人、買ってからカスタム改造したい人、ただ走ればなんでもいい人、ほんとさまざまですよね。中には営業がよかったからこの車に決めた!という人もいます。
テレビや洗濯機や冷蔵庫を選ぶ際、わからなくなって「有名メーカーの高いやつ」を買ったが、使わない機能がたくさんあってほかの安いものでよかったと後悔したり、便利だと思った機能の設定が複雑で所作を覚えるのに一苦労したり、ドラム式の洗濯機を買ったのにサイズを見誤って自宅の洗面所スペースを占領することになったり、高かった割にあまり満足感が得られなかったり、特売に目がむいて衝動的に購入して後悔したり、そんな経験もあるのではないでしょうか?
ATSはこういった製品と同じく一度導入すると一定期間使い続けるようになります。「目利きのポイント」をちゃんと持って、比較検討してから導入することが重要です。最後にお伝えした4つのポイントを念頭に、吟味をして導入されることをお勧めします。
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