求人募集を出しても一向に応募がない。現場責任者からは会議のたびに詰められる。社長からは給与を変えるべきか、採用予算を上げるべきか、具体策を出せと言われる。何を変えれば応募が増えるのか、誰に聞けばいいのか、何を次の打ち手にするのが良いのかわからない。
その問題は、採用成功度診断ツールで解消しましょう。
ここでは採用戦略を立てるうえで非常に便利なツール『HR forecaster』をご紹介します。私の採用支援トレーニングは正社員採用の際の初手でほぼ必ずこれを使います。
forecasterは和訳すると『予測』。明日の天気を予測するように、この募集条件や募集ターゲット設定での採用成功度がどれくらいなのかをレーダーチャートで判定してくれます。さらに数値やスコアを変更することで「採用成功度がどう変わるか」を確認できるツールです。他にこんなツールはないのですね。なのでバイネームでご紹介します。かつ無料です。これはやらない手はないと思います。
早速中身をご紹介しましょう。
システムの概要 このサービスでできる4つの事
HR forecasterはパーソルキャリア株式会社がリリースしています。転職サービスdodaが蓄積した234万件以上のデータ(2024年4月時点)をもとに、企業の採用力を可視化して戦略を立てやすくするツールです。
このサービスでできることは大きく4つ
・現在の採用成功度診断
・採用するための戦略立案(何を変えれば採用難易度が下がるかの検討)
・内容が充実した求人票の作成(人材紹介へのオファー資料作成に超便利)
・採用市場動向の検索
利用は無料です(くどいですが)。ただし登録手続きは必要なのですぐに使えるわけではないですが、この4つが無料で使えるのは採用当事者だけでなく、採用支援を行う人たちにとっても非常に有益ですので是非登録してみましょう。
採用成功度診断の進め方
ログインしたら、まずは自社の採用成功度を測定してみましょう。『採用成功度を診断する』のタブを開けば、「職種」「グレード・役職・等級」「雇用形態」「勤務地(候補者居住地)」「オファー年収」を設定できます。
ここから作成開始ボタンを押すと「求める人材の条件を設定する」画面に移行します。「経歴・学歴」「(経験している)職種・業種」「スキル・経験」「資格・免許」に関して、最大7項目について選択ができます。
最後に、「採用したい人物像」のイメージを具体的に設定します。ここで使うのは「社会人基礎力」。12項目から優先度の高い3つを選択します。
すると明らかになるのは以下です。
・採用成功度の総合評価(最大☆☆☆☆☆)
・条件を満たす人材の平均年収、オファー年収との差
・候補者の数(dodaデータ内の数)
・doda転職求人倍率(dodaにおける倍率)
・採用競合する同業他社の求人数
・採用競合する企業の平均提示年収
・採用決定までの平均日数
・この業界を希望する求職者の転職理由
これらが一覧で可視化され、自社の採用力がどのレベルで、どれくらい戦えるものになっているのかがひとめでわかります。
実際に「年収500万円の不動産営業社員」で診断を行ってみました。オファー年収との差は27万円、募集ターゲットの人数は670人とかなり少なく、競合する他社求人数も2万件を超えて非常に採用難易度は高そう。
ところが、募集から採用までの日数は91日想定と営業職の中では短く、条件が合致すればすぐに採用→稼働が行えそうという皮算用ができました。
現時点での自社の採用成功の可能性、このままの条件で戦えるのか、厳しいのか、そういった静止画の状態がほんの10分もかからないうちに判明します。
採用戦略の立案
静止画での自社のコンディションがわかった次のステップは、どうやれば採用成功可能性が上がるかの戦略立案です。シンプルな方法は給与を変えるという方法。オファー年収を現在の500万円(400~600万円の幅)から、600万円(500~700万円の幅)にあげてみました。するとどうなるか?というと
平均年収での採用力スコアが2から5に一気に変わります。わかりやすいですね。ただ、候補者数は変わらず、採用競合企業数も2万社で変わらず、です。給与を100万円上げたとしても採用成功確率はあまり変わらないといえます。この様子から募集給与を上げることが採用成功可能性アップの一丁目一番地ではなさそうです。なので給与は変えず、採用ターゲットの条件を広げてみます。
サイト上部にある『人材条件変更』をクリックすると採用ターゲット自体を広げたり、狭めたりできます。これは候補者数に影響するので採用難易度が変わってきます。条件を最大5つ、andで全部満たす条件にするのか、orで一部を緩和するのか、そもそもの条件を変更するのか、バリエーションはいくつもあります。
今回は不動産営業経験を外し、なんらかの営業経験または販売職の経験が2年以上あること、に変更してみました。すると、候補者数が670人から26万人に一気に拡大し、オファー年収の相場も527万円から425万円と大きく下がりました。競合する他社求人は5,236社と減少し、オファー年収を500万円で設定しても充分戦いやすい環境が整いました。
応募者層をイメージすることもできます。
求人条件に合致した人物はどんなイメージになるのか?実際の登録者をベースにした具体的な人物像のサンプルも提示してくれます。
この募集条件で求人活動を行い、どんな経歴の人が興味を持ちそうかが把握できると、仮に人材紹介を使って求人活動を行うとしてもエージェントにターゲットを伝えやすくなり、彼らも候補者を探しやすくなります。
求人広告で公募する場合も、広告代理店の原稿制作担当が求人広告を作成しやすくなります。人事担当者とパートナー企業の意思疎通が図りやすくなり、手戻りも少なくなり、仕事が進めやすくなります。
他にもこんなことができる
このほかにも、HR forecasterには求人票作成をナビゲートしてくれるヒアリングノート機能、最新の採用相場を提示してくれるトレンドキャプチャーという機能が搭載されています。
ヒアリングノートは、表示されるナビゲーションに沿って必要事項を入力またはキーワードを選択すると、かなり詳しい求人票(ジョブディスクリプション)を作成することができます。採用の背景、営業職であれば「営業する商品」「営業対象者(個人か法人か、一般家庭か富裕層か、など)」、入力は細かいですが結果的にその募集ポジションの特徴がわかり、募集競合となる同業他社との違いがしっかり記載されたうえに、求職者が知りたい情報が網羅されている求人票が完成します。これを人材紹介のエージェントや求人代理店に提供すると、スカウト送信時のタグ設定に活用することによって、採用成功可能性を高めることもできます。
市場動向を見る(トレンド検索)は、採用難易度がどう変わってきているのか、求人数や候補者の数がどう推移しているのかを3年単位で把握するデータ機能で、候補者数の増減傾向を見ることで、どの時期に募集をすると難易度が軽減されるのかの傾向がつかめ、募集時期の検討に役立ちます。提示年収額の傾向を見れば、横ばいなのか上昇傾向かで募集時の提示額を変えるべきかどうかの判断ができます。戦略立案の補助機能として使えます。
最後に
このツール、もともとは経営や現場責任者の無茶な採用要望に、採用環境を認識している人事担当者が困らないよう、「人事の理論武装」をテーマに作られたツールだと聞いています。この結果を見せながら、経営や現場責任者と採用の戦略を立てる。
「社長のおっしゃるターゲットを採用するためには募集給与をあげていただけませんか?」「部長が欲しいレベルの人材は数がいないので、採用レベルを妥協するか採用完了日数を待っていただくかをお願いできませんか?」という会話が行えれば人事の方も言われたい放題の世界から解放されて気持ちが楽になるのではないでしょうか?
このツールを活用すれば自分たちで採用成功可能性を高める採用戦略を立てることができます。戦い方の軸がわかれば、次の打ち手に困ることが少なくなります。自社の採用成功可能性を自動で判定してもらうことで、他社に負けない採用すべきターゲット、採用方法を検討することができ、採用成功可能性を高められます。具体的なアクションを起こす前に、まずは自社の採用成功可能性を探求することから始めてみましょう。
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